THE DA VINCI CODE (CHAPTER 19) Translating...
Mật mã Da Vinci (tiếng Anh: The Da Vinci Code)
là một tiểu thuyết của nhà văn người Mỹ Dan Brown được xuất bản năm 2003 bởi
nhà xuất bản Doubleday Fiction (ISBN 0385504209). Đây là một trong số các quyển
sách bán chạy nhất thế giới với trên 40 triệu quyển được bán ra (tính đến tháng
3, 2006), và đã được dịch ra 44 ngôn ngữ.
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サン・シュルピス教会は、パリの建造物のなかでもとりわけ数奇な歴史を持つと言われている。エジプトの女神イシスを祭る古代の寺院の跡に建てられたもので、建物の床面の形はノートル・ダム大聖堂とほぼ一致する。マルキ・ド・サドやボードレールの洗礼のほか、ヴィクトル・ユゴーの結婚式もここで執りおこなわれた。付設の神学校には秘められた歴史があるとされ、かつてはそこでさまざまな秘密結社の会合がひそかに開かれたという。
今夜、洞窟にも似た教会堂の身廓は墓場の静けさをたたえていた。夕方のミサで焚かれた香のかすかなにおいだけが、人のいた名残を感じさせる。シラスは聖堂に招じ入れられたとき、シスター・サンドリーヌの緊張した顔つきに気づいた。驚きはしなかった。自分の風貌が他人を落ち着かなくさせるのには慣れている。
「アメリカのかたですね」シスターが言った。
「生まれはフランスです」シラスは答えた。「スペインで神のお召しを受けました。いまはアメリカで修行中です」
シスターはうなずいた。穏やかなまなざしの小柄な女だ。「で、サン・シュルピスを一度もご覧になったことがないと?」
「恥ずべきことだと思っております」
「昼間はもっと美しいのですけれど」
「きっとそうでしょうね。とはいえ、今夜よい機会を与えてくださって感謝しています」
「神父から依頼されました。有力なかたとお知り合いのようですね」
おまえの知ったことではない、とシラスは思った。
シスター・サンドリーヌのあとから中央の通路を進みながら、シラスは聖堂の質素なさまに驚かされた。ノートル・ダム大聖堂の色鮮やかなフレスコ画、金箔の施された祭壇、あたたかみのある木工部分とは対照的に、サン・シュルピス教会は厳格で冷たく、荒涼とした雰囲気すら漂っていて、スペインの禁欲的な大聖堂を思い起こさせる。装飾がないせいで堂内はずいぶん広く感じられ、そびえ立つ天井のアーチを見あげると、逆さになった巨大な船体の下にいる錯覚に陥った。
似つかわしい場所だ、と思った。組織を乗せた船はまさに転覆しようとしている。さっそく仕事に取りかかるために、シスターを立ち去らせたかった。たやすく屈服させることができる小さな女だが、必要に迫られたとき以外には力を行使しないとシラスは心に誓っていた。組織がここをキー・ストーンの隠し場に選んだのはこの女のせいではない。はかの者が犯した罪で責めを負わせるのは筋ちがいだ。
「恐縮です、シスター。わたしのためにおやすみになれなくて」
「気になさらないで。パリには短期間のご滞在とか。サン・シュルピス教会をお見逃しになってはいけません。ご興味があるのは建築様式かしら。それとも歴史?」
「実は、興味を持っているのは教会の精神です」
シスターは朗らかに笑った。「それは当然ですね。ただ、どこからご案内したらいいかと思いまして」
シラスの視線はおのずと祭壇へ移った。「ご案内には及びません。もうじゅうぶん力になっていただきました。ひとりで見てまわります」
「かまいませんのよ」シスターは言った。「どのみちわたしは起きているのですから」
シラスは歩みを止めた。すでにふたりは会衆席の最前列まで進み、祭壇まで十五ヤードしかない。巨?をひるがえして女の前に立ちはだかるや、相手がこちらの赤い目を見あげてすくみあがるのがわかった。「失礼ながら、わたしは神の家へ唐突に踏みこんで歩きまわるということに慣れておりません。もし差し支えがなければ、見せてもらう前にひとりで祈りを捧げる時間をいただきたいのですが」
シスター・サンドリーヌは躊躇した。「ええ、よろしいですよ。わたしは後ろのほうで待っています」
シラスは重く柔らかな手をシスターの肩に置いた。
「おやすみの邪魔をしただけでも心苦しく思っているのです。そのうえお待たせするなど、とんでもないことですよ。どうか寝室へお引きとりください。見終えましたら勝手においとましますから」
シスターは不安げだった。「ほんとうにひとりで心細くありませんか」
「だいじょうぶです。祈りの喜びは孤独のなかでこそ得られます」
「でしたら、お好きなように」シラスは手をおろした。「おやすみなさい、シスター。主の安らぎがあなたに訪れますように」
「そしてあなたにも」シスター・サンドリーヌは階段へ向かった。「お帰りになるときは扉をしっかりと閉めてくださいね」
「わかりました」シラスは、シスターが階段をあがって姿を消すまで見送った。それから向きを変えて席の最前列にひざまずくと、シリスが大腿に食いこむのを感じた。
神よ、きょうのつとめをあなたに捧げます……
祭壇のはるか上にある聖歌隊用のバルコニーの暗がりに身をかがめ、シスター・サンドリーヌは、ひとりで祈る外套姿の修道僧を手すりの隙間から静かにのぞき見た。突然、じっとしていられないほどの恐怖が湧き起こった。この奇妙な訪問者こそ、警戒するよう以前から教えこまれている敵かもしれないという思いが一瞬頭をよぎる。長年心に留めるばかりだった指令を、今夜こそ実行しなくてはならないのだろうか。シスターは闇に身をひそめたまま、男の動きをつぶさに見守ることにした。
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