THE DA VINCI CODE (CHAPTER 20) Translating...
Mật mã Da Vinci (tiếng Anh: The Da Vinci Code)
là một tiểu thuyết của nhà văn người Mỹ Dan Brown được xuất bản năm 2003 bởi
nhà xuất bản Doubleday Fiction (ISBN 0385504209). Đây là một trong số các quyển
sách bán chạy nhất thế giới với trên 40 triệu quyển được bán ra (tính đến tháng
3, 2006), và đã được dịch ra 44 ngôn ngữ.
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ラングドンとソフィーは仕切り板の陰から出て、閑散としたグランド・ギャラリーを非常階段へと忍び足で進んだ。
歩きながらラングドンは、暗闇でジグゾーパズルを組み立てる気分に陥っていた。なんとも厄介な展開になったものだ。司法警察の警部が自分に殺人の罪を着せようとしているなんて。
「ひょっとして」小声で言った。「ファーシュが床にメッセージを書いたんじゃないだろうか」
ソフィーは振り返りもしなかった。「ありえないわ」
ラングドンにも確信はなかった。「ファーシュはわたしを犯人に仕立てあげたいようだ。わたしの名前を床に書いておけば立件しやすいと考えたのかもしれない」
「フィボナッチ数列はどうなるの? P.S.は? ダ・ヴィンチだの、女神の象徴だのは? 祖父以外に考えられない」
そのとおりだった。それぞれの手がかりが象徴するものは完壁すぎるほど整合する
―五芒星、〈ウィトルウィウス的人体図〉、ダ・ヴィンチ、女神、さらにフィボナッチ数列。一貫性のある象徴群、と図像学者なら呼ぶところだ。すべてが密接にからみ合っている。
「それに、きのうの午後のあの電話」ソフィーはつづけた。「わたしに話があると言っていた。書き残したメッセージは、何か大切なことを伝える最後の手段だったはずよ。それを読み解くためにあなたが力になってくれると、祖父は信じていたんだわ」
ラングドンは眉間に敏を寄せた。〝おお、ドラコンのごとき悪魔め!おお、役に立たぬ聖人め!〟。ソフィーと自分の両方のために、そのメッセージの意味を知る必要がある。はじめてその謎めいたことばを目にしたときよりも、事態は明らかに悪くなっている。トイレの窓から逃げたと見せかけたことは、ファーシュの自分に対する印象を好転させる助けには、まちがってもなるまい。追跡のあげくに石?を逮捕するという筋書きを、あの警部がユーモアと解してくれるとは考えにくい。
「出口はもうすぐよ」ソフィーは言った。
「あの数字にメッセージを解読する鍵が隠されている可能性はないかな」ラングドンは以前べーコンの手書き原稿をいくつか読んだことがあるが、それらの冒頭部分には数字が並んでいて、そこに隠された暗号を解読できると残りの部分も読めるという形になっていた。
「わたしもあの数字についてずっと考えてるわ。たしたり割ったりかけたりしたけど、何も見えてこない。数学的には意味がない配列よ。まったくのでたらめ」
「でも、フィボナッチ数列の一部であることはたしかだ。偶然あの値が選ばれたはずはない」
「そうね。フィボナッチ数列はわたしの目を引きつける手立てだったのよ。英語でメッセージを書いたり、全身を使ってわたしの好きな絵に見立てたり、体に五芒星を描いたりしたのも同じこと。どれもわたしの注意を促すためだわ」
「五芒星はきみにとって意味があるのかい」
「ええ。まだ言っていなかったけど、五芒星は子供のころのわたしと祖父にとって特別な記号だったの。いっしょにタロット・カードで遊んだことがよくあって、わたしがはじめに出すカードは決まって五芒星の組だった。いま思えば祖父が細工をしたにちがいないけど、五芒星はわたしたちにとって笑いの種だったわ」
ラングドンは身震いした。タロットで遊んだ? その中世イタリアのカードゲームには異教徒の象徴が数多く隠されているので、ラングドンは執筆中の原稿にタロットだけを扱った章を設けたほどだった。二十二のカードにはそれぞれ〝女教皇〟、〝女帝〟、〝星〟などの名前がつけられている。本来タロットは、教会から禁じられた思想をひそやかに伝えるための手段として考案された。その神秘性は現代の占い師に引き継がれている。
タロットで女性の神性を示すのは五芒星の組だ。ソニエールが孫娘の持ち札に仕掛けをしたのなら、五芒星はたしかにふたりに笑いをもたらしたことだろう。
非常階段ロに着き、ソフィーは用心深くドアを引いた。警報は鳴らなかった。装置が作動するのは建物の外へ出るドアだけらしい。ソフィーはラングドンを従えて、一階へつづく折れ曲がったせまい階段へ踏み出し、しだいに足を速めた。
ラングドンはあわただしくあとを追いながら言った。「ミスター・ソニエールは五芒星の話をするとき、女神崇拝やカトリック教会の猛攻撃について話したかい」
ソフィーは首を横に振った。「わたしは数学的な要素のほうに興味があったの―黄金比とか、フィボナッチ数列などにね」
ラングドンは驚いた。「子供のころに黄金比について教わった?」
「そうよ。黄金比―神聖なる比率」そう言って、恥ずかしげな顔つきになる。「祖父はわたしを半分だけ神聖だと言ってからかったものよ……ほら、わたしの名前の綴りがそうなってるから」
ラングドンは一瞬考えこんだのち、うなり声を発した。
SoPHIe―ソフィー。
階段をおりつつ、ラングドンはふたたび黄金比に思考を集中させた。ソニエールが残した手がかりには、最初の想像よりもはるかに強い一貫性があるらしい。
ダ・ヴィンチ……フィボナッチ数列……五芒星。
驚くべきことに、これらはみな、美術史の研究上欠かせないひとつの概念によって結びついている。ラングドンはそれについて何回も授業で取りあげたことがあった。
黄金比。
突然、ハーヴァードの授業の記憶がよみがえった。〝美術における象徴〟という授業で、壇上に立って自分の大好きな数字を黒板に書いているところだ。
1.618
ラングドンは振り返って、教室を埋めつくす熱心な学生たちへ顔を向けた。「だれかこの数について説明できるか?」
後方の席にいる脚の長い数学専攻の学生が手をあげた。「PHI。黄金比です」
「そのとおりだ、ステットナー」ラングドンは言った。「諸君、黄金比を紹介しょう」
「私立探偵と混同しないでくださいよ」ステットナーはにやりと笑って付け足した。
「ぼくら数学をやっている者はよくこう言うんです。黄金比はHがあるおかげで、PIよりずっと切れ者だってね!」
ラングドンは声をあげて笑ったが、はかの学生たちにはそのジョークが理解できないらしい。
スチットナーは肩を落とした。
「黄金比すなわち」ラングドンはつづけた。「1・618は芸術においてきわめて重要な数値だ。その理由がわかる者は?」
ステットナーが名誉を挽回しようとした。「美しいからです」
笑いが湧き起こった。
「実は」ラングドンは言った。「またしてもご名答だ。これは宇宙で最も美しい数値だと一般に考えられている」
急に笑い声がやみ、スチットナーはほくそ笑んだ。
スライド映写の準備を進めながら、ラングドンは黄金比がフィボナッチ数列から導き出されることを説明した。その数列は、隣り合うふたつの項の和がつぎの項の値に等しいことで名高いが、隣り合うふたつの項の比がある数へ近づいていくという性質も持っている。その数こそ黄金比すなわち約1・618だ。
その摩河不思議な性質についての数学的な解明はさておき、真に驚嘆すべきは、黄金比が自然界の事物の基本的な構成に深くかかわっていることだと、ラングドンは説いた。植物や動物、そして人間についてさえも、さまざまなものの比率が不気味なほどの正確さで1・618対1に迫っている。
「黄金比は自然界のいたるところに見られる」ラングドンはそう言って照明を落とした。「偶然の域を超えているのは明らかで、だから古代人はこの値が万物の創造主にいにしえよって定められたにちがいないと考えた。古の科学者はこれを〝神聖比率〟と呼んで崇めたものだ」
「待ってください」最前列の席にいる女子学生が言った。「わたしは生物学専攻ですけど、自然界でその神聖比率とやらに出会ったことがありません」
「そうかい」ラングドンはにっこり笑った。「ミツバチの群れにおける雄と雌の個体数の関係について学んだことは?」
「ありますよ。雌の数はつねに雄を上まわります」
「正解。では、世界じゅうどのミツバチの巣を調べても、雌の数を雄の数で割ると同じ値が得られることは知ってるかい」
「えっ?」
「そう、黄金比になるんだ」
女子学生は口を大きくあけた。「信じられない!」
「ほんとうなんだよ」ラングドンはことばを投げ返し、微笑みながら巻き貝の殻のスライドを映写した。「これがなんだかわかるね」
「オウムガイです」生物学専攻の女子学生は答えた。「軟体動物の頭足類で、殻のなかの隔室へ気体を送りこんで浮力を調節します」
「そのとおり。どこであれ、この螺旋形の直径は、それより九十度内側の直径の何倍になるか想像できるかい」
女子学生は不安げな表情で渦巻く殻のカープを見つめた。
ラングドンはうなずいた。「黄金比だ。神聖比率。1・618対1」
女子学生は目をまるくした。
ラングドンはつぎのスライドへ移った。ヒマワリの頭花を拡大した映像だ。「ここでは逆方向の螺旋がいくつも渦巻いて並んでいる。それぞれの渦巻きを、同様に九十度内側と比較したときの直径の比率は?」
「黄金比?」全員が口をそろえた。
「ピソゴだ」それからラングドンはつぎつぎスライドを入れ替えた。渦状に並んだ松かさの鱗片、植物の茎に葉がつく配列、昆虫の体の分節―すべてが驚くほど忠実に黄金比を示していた。
「こいつはびっくりだ!」だれかが叫んだ。
「なるほど」ほかの学生が言った。「でも、これが芸術とどんな関係があるんですか」
「そう!」ラングドンは言った。「いい質問だ」スライドをもう一枚映す。黄ばんだ羊皮紙に、レオナルド・ダ・ヴィンチによる名高い男性裸体画が描かれている。〈ウィトルウィウス的人体図〉。題名のもとになった古代ローマの著名な建築家マルクス・ウィトルウィウスは、その著書『建築論』のなかで神聖比率を賛美している。
「ダ・ヴィンチは人体の神聖な構造をだれよりもよく理解していた。実際に死体を掘り出して、骨格を正確に計測したこともある。人体を形作るさまざまな部分の関係がつねに黄金比を示すことを、はじめて実証した人間なんだよ」
教室内の全員が半信半疑の面持ちを見せた。
「信じられないとでも?」ラングドンは強い口調で言った。「こんどシャワーを浴びるときは、巻き尺を持っていくといい」
数人のフットボール選手が笑いを噛み殺した。
「肉体派の諸君だけじゃなくて」ラングドンはつづけた。「きみたち全員がだよ。男も女もやってみるんだ。まず頭のてっぺんから床までの長さを測る。つぎにそれを、へそから床までの長さで割る。答はなんだと思う?」
「黄金比のはずがない!」フットボール選手のひとりが思わず叫んだ。
「いや、黄金比だ」ラングドンは答えた。「1・618。ほかにも例をあげようか。肩から指先までの長さを測り、それを肘から指先までの長さで割る。黄金比だ。腰から床までの長さを、膝から床までの長さで割る。これも黄金比。手の指、足の指、背骨の区切れ目。黄金比、黄金比、黄金比。きみたちひとりひとりが神聖比率の申し子なんだよ」
暗がりではあったが、全員の愕然とした様子がわかった。ラングドンはいつものあたたかい感情が湧くのを感じた。これだから教えるのは楽しい。「見てのとおり、混沌とした世界の底には秩序が隠れている。太古の人々は黄金比を兄いだしたとき、神の創りたもうた世界の基本原理に出くわしたと確信し、それゆえに自然を崇拝した。当然だな。神の手は森羅万象のなかに感じられ、母なる大地を崇める宗教は現代でも存在する。われわれの多くは、異教の風習で自然を祝福しておきながら、そのことを知らずにいる。五月祭がいい例だよ。これは春の祭典で、大地がよみがえってその恵みをもたらす日だ。黄金比の持つ神秘的な特性については、はるか昔に記されている。人間は自然の法則に従って行動する存在にすぎず、芸術とは神の生み出した美を人間が摸倣する試みにほかならない。だから今学期は、黄金比の数多くの実例を見ていくことになるだろう」
つづく三十分間、ラングドンはスライドによってミケランジェロ、アルブレヒト・デューラー、ダ・ヴィンチなど多数の芸術家の作品を紹介し、それぞれが作品の構成において意図的かつ厳格に黄金比に従っていることを実証した。ギリシャのパルテノン神殿、エジプトのピラミッド、果てはニューヨークの国連ビルに至るまで、その建築寸法に黄金比が使われていることも明らかにした。モーツァルトのソナタやベートーヴェンの交響曲第五番、さらにバルトーク、ドビュッシー、シューベルトの作品でも、黄金比が構成上の大きな要素を占めている。かの有名なストラディヴァリウスのバイオリンが作られたときに、黄金比を基準としてf字孔の正確な位置が決められたことも、ラングドンは語り聞かせた。
「おしまいに」ラングドンはそう言って黒板へ歩み寄った。「象徴の話へもどろう」五本の線を交差させて、頂点が五つある星形を描く。「この記号は、きみたちが今学期最も強烈な印象を受けるもののひとつだ。正式には五線星形、かつては五芒星と呼ばれたこの記号は、さまざまな文化圏において、神聖で魅惑的なものと見なされている。その理由がわかる者は?」
数学専攻のステットナーが手をあげた。「五線星形を描くと、できあがる線分同士の比が黄金比と一致するからです」
ラングドンは満足そうにうなずきを返した。「いいぞ。五芒星のすべての線分は互いに黄金比の関係をなすので、このしるしは神聖比率の究極の表現だと言える。だから、五芒星は女神や聖なる女性と関係づけられ、美と完全性の象徴でありつづけた」
女子学生たちの顔が輝いた。
「ひとつ言っておこう。きょうはダ・ヴィンチについて簡単にふれる程度だったが、今学期中にはるかに多くを見ていくことになる。レオナルドはまちがいなく、古代の女神にまつわるものに心を奪われていた。あすは壁画の〈最後の晩餐〉を紹介する。聖なる女性を賛美した、驚嘆すべき作品だよ」
「冗談でしょう?」だれかが言った。「〈最後の晩餐〉はイエスを描いた絵なのに―」
ラングドンはウィンクをした。「象徴は思いがけないところに隠されているものだ」
「さあ早く」ソフィーがささやいた。「どうしたの? もうすぐよ。急いで!」
かなたの物思いから呼びもどされ、ラングドンは顔をあげた。階段の途中だが、あることが突然頭にひらめいて、脚が動かなくなった。
おお、ドラコンのごとき悪魔め!おお、役に立たぬ聖人め!
ソフィーがこちらを振り返っている。
こんなに簡単なはずがあろうか、とラングドンは思った。
しかし、これしかない。
ルーヴル美術館の奥深くで……黄金比とダ・ヴィンチの映像が脳裏に渦巻くなか、
不意にソニエールの暗号が解けた。
「おお、ドラコンのごとき悪魔め!」ラングドンは声に出して言った。「おお、役に立たぬ聖人め!単純な暗号じゃないか!」
ソフィーは足を止め、困惑してラングドンを見あげた。暗号? あのことばについては何時間も考えたが、どんな暗号かは見抜けなかった。単純と言われると、いよいよわからない。
「きみも言っていただろう」ラングドンの声には興奮の響きがある。「フィボナッチ数列は本来の配列でこそ意味をなす。そうでなければ数学的にでたらめだって」
何が言いたいのか、ソフィーにはまるでわからなかった。フィボナッチ数列? あの数字が書かれたのは暗号解読課を捜査に関与させるためとしか思えない。それとも、はかに意図が? ポケットに手を入れてプリントアウトを取り出し、祖父のメッセージをもう一度よく見た。
13―3―2―21―1―1―8―5
0,Draconian devil!
Oh,lame saint!
13―3―2―21―1―1―8―5
おお、ドラコンのごとき悪魔め!
おお、役に立たぬ聖人め!
この数字がどうしたというの?
「配列の乱れたフィボナッチ数列が鍵だ」ラングドンはそう言って紙をつかんだ。
「数の部分はその下のメッセージを読み解く手がかりになっている。数列の順序を変えたのは、字句にも同じ考え方をあてはめろと教えるためだったんだよ。ドラコンのごとき悪魔だの、役に立たぬ聖人だのにはなんの意味もない。この二行は文字がでたらめに並んでるだけだ」
ソフィーは瞬時にして理解した。わかってしまえば、おかしいくらい単純なことだ。
「このメッセージが……アナグラムですって?」ラングドンを見つめる。「新聞にある文字の並べ替えクイズみたいな?」
ソフィーの顔に疑いの表情が浮かぶのを見て、ラングドンはそれも無理はないと思った。アナグラムは現代人のささやかな娯楽となっているものの、それに神聖な歴史があることはほとんど知られていない。
カバラ密教ではアナグラムを重んじ、ヘブライ語の字句を入れ替えて新たな意味を導き出していた。ルネッサンス時代のフランス歴代国王は、アナグラムに魔力があると信じていたため、直属のアナグラム研究家を登用して重要文書の文言の解析にあたらせ、判断をくだす際の参考にした。古代ローマ人は、アナグラムの研究を〝偉大なる芸術〟と呼んでいた。
ラングドンはソフィーとしっかり目を合わせた。「ミスター・ソニエールが伝えたかったことは、はじめからわたしたちの目の前にあった。読み解く手がかりはじゅうぷんすぎるくらいだったんだ」
それ以上何も言わず、上着のポケットからペンを抜いて、それぞれの行の文字を並べ替えたものを紙に記した。
O,Draconian devil!
Oh,lame saint!
この二行を並べ替えると……
Leonardo da vinci!
The Mona Lisa!
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