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THE DA VINCI CODE (CHAPTER 21) Translating...

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Mật mã Da Vinci (tiếng Anh: The Da Vinci Code) là một tiểu thuyết của nhà văn người Mỹ Dan Brown được xuất bản năm 2003 bởi nhà xuất bản Doubleday Fiction (ISBN 0385504209). Đây là một trong số các quyển sách bán chạy nhất thế giới với trên 40 triệu quyển được bán ra (tính đến tháng 3, 2006), và đã được dịch ra 44 ngôn ngữ.
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 モナ・リザ。
 階段の途中で、ソフィーはルーヴルから脱出しようとしていることを一瞬すっかり忘れた。
 アナグラムだと知った驚きも大きいけれど、自分でメッセージを解読できなかったことが情けなかった。複雑な暗号の解読法に関する専門知識があるせいで、かえって単純なことば遊びを見過ごしたのかもしれないが、やはり気づくべきだった。なんと言っても、自分はアナグラムに精通しているとりわけ英語のものに。
 子供のころ、英語の綴りを覚えるために、よくアナグラムのゲームをさせられたものだ。ある日、祖父は〝Planets〟という英単語を書き、これらの七文字を使ってなんと九十二種類ものことばの組み合わせをほかに作れると告げた。ソフィーは三日間英語の辞書を隅々まで見て、すべてを調べあげた。
「信じられないな」紙を見つめながらラングドンは言った。「どうやったら死の間際の数分でこれほど複雑なアナグラムを編み出せるのか」
 ソフィーには理由がわかっていた。だからこそよけいに後ろめたい。見抜けたはずなのに! その昔、ことば遊びと美術を心底愛した若き祖父は、著名な芸術作品の名前からアナグラムを作って楽しんでいた。ソフィーが子供のころ、祖父はそのアナグラムのひとつで物議を醸したことがある。アメリカの美術雑誌のインタビューで、祖父はピカソの傑作〈アヴィニョンの娘たち(LesDemoisellesd'Avignon)〉が〝穢らわしい無意味ないたずら書き(vilemeaninglessdoodles)〟の完璧なアナグラムになると口走って、キュービズム運動への嫌悪をむき出しにした。ピカソに傾倒する者たちが喜ぶはずはなかった。
「たぶん祖父は、ずいぶん前にモナ・リザのアナグラムを作ったんだと思う」ソフィーはラングドンを見あげて言った。そして今夜、急場しのぎの暗号としてこれを使わざるをえなかったのだろう。かなたからの祖父の叫びが、身が凍るほどはっきりと感じられる。
レオナルド・ダ・ヴィンチ!
モナ・リザ!
 辞世のことばがなぜ有名な絵画の名であるのか、ソフィーには見当がつかなかったが、ひとつだけ考えついた。困惑させられる答だ。
 辞世のことばではない……
〈モナ・リザ〉を見にいけということか? そこにメッセージを残しておいたと?
じゅうぶんありうる話だった。なんと言っても、あの名高い絵はグランド・ギャラリーに隣接する奥まった部屋〈国家の間〉に展示されている。祖父は死の間際に〈モナ・リザ〉のところまで行けたはずだ。
 非常階段の上へ視線をもどし、心が引き裂かれる思いがした。ラングドンを一刻も早く脱出させるべきなのはわかっているけれど、本能がその道を命じている。幼いころにドゥノン翼へはじめて来たときの記憶が呼び覚まされた。祖父が自分に秘密を打ち明けるとしたら、ダ・ヴィンチの〈モナ・リザ〉以上にふさわしい場所はほとんど思いつかない。

「もうすぐだよ」祖父は閉館後の人気のない館内を進みながら、ソフィーの小さな手を握ってささやいた。
 ソフィーは六歳だった。途方もなく広い天井や目のくらみそうな床の模様を見つめていると、自分がとるに足りないちっぽけな人間に思えた。だれもいない美術館は気味が悪いが、それを悟られたくはない。口を固く引き結んで祖父の手を離した。
「この先が〈国家の間〉だ」祖父は言い、ルーヴルで最も有名な展示室へふたりで歩いていった。祖父は見るからに興奮していたが、ソフィーは家に帰りたかった。〈モナ・リザ〉は本で見たことがあるけれど、まったく好きではない。みんなが大騒ぎをする理由がわからなかった。
「セ・アンニュイユー」ソフィーは文句を言った。
「〝つまらない〟だよ」祖父は正した。「学校ではフランス語、家では英語だ」
「ル・ルーヴル。ここは家じゃない!」ソフィーは言い返した。
 祖父はあきれ顔で笑った。「なるほど。じゃあ、遊びで英語を話そうか」
 ソフィーはふくれっ面をして歩いた。〈国家の間〉に着くと、ソフィーの視線は展示室をめぐり、はっきりと威光が感じられる一点右手の壁の中央に落ち着いた。
一枚の肖像画が防弾用プレキシガラスに囲まれて掛かっている。祖父は入口にとどまったまま、絵のほうへいざなう手ぶりをした。
「行ってごらん、ソフィー。ひとりきりであの絵を観られる人はめったにいない」
 心細さを噛み殺して、ソフィーはゆっくりと中へ進んだ。〈モナ・リザ〉についてはいろいろ聞き知っていたので、貴人に歩み寄る気分だった。プレキシガラスの前に着き、息をひそめて見あげると、瞬時にして全体を感じとれた。
 どんな感想を予期していたかははっきりしないが、とにかくこんなふうになるとは思わなかった。強い驚きはない。不思議に感じる瞬間も訪れない。有名なその顔は本にあるのと同じだ。永遠とも思える時間、ソフィーは無言で立ちつくし、何かが起こるのを待っていた。
「どう思うね」祖父がソフィーの後ろに来てささやいた。「美しいだろう?」
「小さすぎる」
 祖父は笑みを浮かべた。「おまえも小さいけれど美しいよ」
 美しくない、とソフィーは思った。自分の赤毛とそばかすは大きらいだし、クラスではどの男の子よりも大きい。〈モナ・リザ〉を振り返って、かぶりを振った。「本で見たのほどきれいじゃないわ。顔が……ブリュムー」
「〝ぼやけている〟だよ」祖父は教えた。
「ぼやけている」ソフィーは繰り返した。新しい語彙を復唱しないうちは話が進まないと知っていたからだ。
「これはスフマート画法と呼ばれている」祖父は説明した。「とてもむずかしい描き方だ。レオナルド・ダ・ヴィンチはだれよりもこの描き方が上手だった」
 ソフィーはまだその絵が好きになれなかった。「この女の人は何かを知ってるみたい……学校の子たちが隠し事をしてるときもこんなふうよ」
 祖父は笑った。「それこそが、この絵が有名な理由のひとつなんだよ。モナ・リザがなぜ微笑んでいるのかをあれこれ考えるのが好きな人がおおぜいいるんだ」
「なぜ微笑んでるのか、おじいちゃんにはわかるの?」
「たぶんな」祖父は片目をつぶってみせた。「それについてはいつか全部話すさ」
 ソフィーは足を踏み鳴らした。「秘密はきらいだと言ったでしょ!」
「プリンセス」祖父は笑みを浮かべた。「人生には秘密がいっぱいある。何もかも一度に知ることはできないんだ」

「わたしは上へもどるわ」ソフィーの声はあたりに響きわたった。
「〈モナ・リザ〉のところへ?」ラングドンはひるんだ。「いま?」
 ソフィーは危険を推し量った。「わたしは殺人の容疑者じゃないのよ。幸運に賭けてみる。祖父が何を伝えようとしたのか、どうしても知りたいの」
「大使館のほうはどうするんだ」
 逃亡の手引きをしたあげくにラングドンを見捨てるのは気が咎めたが、ほかに道はない。ソフィーは階段の下にある金属製のドアを指さした。「あのドアを出て、照明の灯った標識につぎつぎ従って出口へ向かえばいいわ。祖父はよくここに連れてきてくれたの。目印のとおりに進めば回転ゲートに着く。一方通行で出口専用よ」ラングドンに車のキーを渡す。「わたしの車は赤のスマートカーで、職員用の駐車場に停めてある。この壁のすぐ外側よ。大使館への道順はわかるかしら」
 ラングドンは受けとったキーを見てうなずいた。
「聞いて」ソフィーは静かな声で言った。「祖父は〈モナ・リザ〉の絵のあたりに、わたしへのメッセージを残したんじゃないかと思うの。自分を殺した犯人についての手がかりか何かをね。あるいは、わたしの身に危険が迫っている理由についての」〝家族にまつわる真実〟についてかもしれない、と思った。「それを見にいかなくちゃ」
「しかし、危険が迫っている理由をきみに教えたいのなら、床の上にそのまま書けばいいじゃないか。なぜこんなにこみ入った仕掛けを?」
「何を伝えようとしたにせよ、他人に内容を知られたくなかったんでしょうね。警察にさえも」祖父が死力を尽くして自分だけに極秘のメッセージを伝えようとしたのは疑いない。伝言を暗号で書き、秘密の頭文字を入れ、ロバート・ラングドンを探せと指示した。このアメリカ人の象徴学者が暗号を解読したことを考えると、賢明な指示だったと言える。「妙に聞こえるかもしれないけど、祖父はわたしに、だれよりも先に〈モナ・リザ〉のもとへ行かせたかったんじゃないかしら」
「わたしもいっしょに行く」
「だめよ! いつ追っ手が引き返してくるか、わからないんだから。あなたは逃げなくちゃ」
 ラングドンは迷っているらしい。学究心の強さゆえに判断力を失い、みずからファーシュの手中に落ちようとしているかのようだ。
「逃げて。早く」ソフィーは明るく微笑んだ。「大使館で会いましょう、ミスター・ラングドン」
 ラングドンは不満そうだった。「大使館で会うには、ひとつ条件がある」断固とした口調で言った。
 ソフィーは驚いて、一瞬黙した。「何かしら」
「ミスター・ラングドンという呼び方をやめることだ」
 その顔をゆがんだ笑みがよぎったのを見てとり、ソフィーは思わず微笑み返した。
「幸運を祈るわ、ロバート」
 階段をおりきると、まざれもないリンシード・オイルと石膏の粉のにおいが鼻脛を刺激した。前方には〝出口〟と書かれた標示灯が見え、長い廊下の先を矢印で示している。
 ラングドンは通路へ踏み出した。
 右手に薄暗い修復用アトリエがあり、さまざまな修復過程にある彫像群がこちらを見つめている。左へ視線を向けると、ハーヴァードの美術学の教室に似たひとつづきのアトリエが目にはいった。イーゼル、絵、パレット、工具が並んでいる美術品修復の流れ作業だ。
 通路を進むうちに、いまにも突然目が覚めて、マサチューセッツ州ケンブリッジの自宅のベッドに横たわっているのではないかと思えてきた。今宵のすべてが奇怪な夢のようだ。自分が逃亡者としてルーヴルを抜け出そうとしているなんて。
 ソニエールによる手のこんだアナグラムが脳裏を離れず、ラングドンは考えこんだ。
〈モナ・リザ〉のあたりで何を見つけるつもりなのか。あの有名な絵まで引き返すことを祖父が望んでいると、ソフィーは確信しているようだ。それなりに納得できるものの、いまのラングドンは厄介な矛盾に悩まされていた。
 PS.ロバート・ラングドンを探せ。
 ソニエールはラングドンの名を床に書き、探すようソフィーに命じた。しかし、なぜだろう。単にアナグラムを読み解く助けとするためなのか。
 その可能性はきわめて低い。
 だいいち、こちらがアナグラムに精通しているとソニエールが考える根拠はどこにもない。面識すらないではないか。さらに言えば、ソフィー本人が、アナグラムを自力で解くべきだったと認めている。フィボナッチ数列に着目したのはソフィーだし、もう少し時間を与えられていたら、こちらの助けを借りずにメッセージを解読していたにちがいない。
 本来ならソフィーがアナグラムを解くはずだった。その確信が一気に強まり、だからこそソニエールの行為がまったく理不尽に感じられた。
 なぜこの自分を選んだのか。ラングドンは思案しながら通路を進んだ。なぜソニエールの臨終の願いが、孫娘に自分を見つけさせることなのか。この自分にならわかるとソニエールが考えるものはなんだろう?
 不意に思いあたり、ラングドンは立ち止まった。目を大きく開き、ポケットに手を突っこんでプリントアウトを引き出す。ソニエールのメッセージの最終行を見つめた。
 PS.ロバート・ラングドンを探せ。
 ふたつの文字を食い入るように見る。
    PS
 その瞬間、ソニエールが示した混沌たる象徴の群れが、はっきりと像を結んだ。生涯をかけて積みあげた象徴学と歴史学の知識が、雷鳴さながらの音を立てて崩れ落ちた気がする。ジャック・ソニエールが今夜したことの全貌が、瞬時にして見てとれた。
 ラングドンはその意味するところを整理しようと、すばやく考えをめぐらせた。振り返って、いま来た方向へ目を向ける。
 時間はあるだろうか。
 むろん、そんなことはどうでもよかった。
 ためらうことなく、ラングドンは全速力で階段へ駆け出した。

Unknown

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