THE DA VINCI CODE (CHAPTER 05) Translating...
Mật mã Da Vinci (tiếng Anh: The Da Vinci Code)
là một tiểu thuyết của nhà văn người Mỹ Dan Brown được xuất bản năm 2003 bởi
nhà xuất bản Doubleday Fiction (ISBN 0385504209). Đây là một trong số các quyển
sách bán chạy nhất thế giới với trên 40 triệu quyển được bán ra (tính đến tháng
3, 2006), và đã được dịch ra 44 ngôn ngữ.
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マレー・ヒル・プレイス―オプス・デイの新しい本部と会議場は、ニューヨーク市のレキシントン・アヴェニュー二四三番地にある。四千七百万ドルの費用をかけた約十三万平方フィートの楼閣の外壁には、赤煉瓦とインディアナ産の石灰岩が用いられている。メイ&ピンスカ社の設計によるこのビルは、百以上の個人用寝室、六つの食堂、数々の図書室や居間や会議室やオフィスを備える。二階、八階、十六階には、木と大理石で飾られた礼拝堂がある。十七階はすべて居住空間だ。男性はレキシントン・アヴェニューに面した表玄関から入館する。女性は別の通りからはいり、館内では男性と〝聴覚的にも視覚的にも遮断〟される。
先刻、この建物の聖なるペントハウスで、マヌエル・アリンガローサ司教が小さな旅行鞄に荷物を詰め、伝統的な黒い法衣を身につけた。いつもなら紫の帯を腰に巻くのだが、今夜は一般の人々に交じって出かけるつもりであり、自分が高位にあると気どられたくなかった。よほどの観察眼を持つ人間だけが司教の指輪に気づくだろう。十四カラットの金でできたその指輪には紫のアメジストと大きなダイヤモンドがはめこまれ、司教冠と杖の彫り物がある。旅行鞄を肩にかけ、声を出さずに祈りを唱えてから部屋を出て、ロビーへおりた。待っていた運転手が車で空港まで送った。
いま、アリンガローサはローマ行きの民間機の窓から暗い大西洋を見つめていた。日はとうに沈んでいるが、自分自身の星がのぼりつつあるのは知っている。今夜、戦いに勝つ。ほんの数か月前、わが帝国を破壊しようとする者に対し、なす術もないと感じていたのが嘘のようだ。
オプス・デイの代表として、アリンガローサ司教はこの十年間を、神の御業―ラテン語でオプス・デイ―を広く伝えるために費やしてきた。この組織はスペイン人神父ホセマリア・エスクリバーによって一九二八年に創立された。カトリック本来の価値観への回帰を奨励し、会員には神の御業を実践するために、みずからの生活においても大きな犠牲をいとわぬよう呼びかけた。
オプス・デイの伝統主義的な思想は当初、フランコ体制以前のスペインに根づいたが、一九三〇年代にホセマリア・エスクリバーによる霊的な書『道』(神の御業を人生で実践するための九百九十九の教訓を説いたもの)が出版されると、エスクリバーのメッセージは世界じゅうへ一気に広まった。『道』は四十二か国語で四百万部以上発行され、オプス・デイは地球規模の勢力となった。大都市にはかならずと言っていいほど宿舎や教育施設が置かれ、大学まで存在する。オプス・デイは世界で最も成長が速く、最も財政の安定したカトリック組織である。不幸にも、宗教不信やカルトやテレビ伝道師がはびこるこの時代では、オプス・デイの増大する資産や影響力が疑惑を招くということを、アリンガローサは承知していた。
「オプス・デイはよく洗脳カルトと言われますが」記者たちはしばしば責め立てた。
「超保守的なキリスト教秘密結社と呼ぶ人もいます。どちらなのですか」
「どちらでもありません」司教は辛抱強く答えた。「わたしたちはカトリック教会の一派です。日々の暮らしのなかでかぎりなく厳格にカトリックの教義に従うことを旨とした、カトリックの信徒団なのです」
「神の御業には、きびしい貞潔の誓いや高額の寄付、それに自分を鞭打ったりシリスを身につけたりして罪を購う行為が必要なのでしょうか」
「あなたがおっしゃっているのは、オプス・デイのほんの一部分にすぎません」アリンガローサは言った。「かかわり方にはさまざまな段階があるのです。オプス・デイの会員の多くは結婚して家族を持ち、それぞれの地域社会のなかで神の御業を実践しています。一方、世俗との交渉を断って宿舎で修行生活を送る道を選ぶ者もいます。どちらを選択するかは個人の自由ですが、神の御業によって世界をよりよき場所にするという目標はオプス・デイに属する全員に共通しているのですよ。これはまさに賞揚すべき探求ではありませんか」
しかし、道理を説いても効果はなかった。メディアはスキャンダルにしか興味を示さないし、オプス・デイも大組織のご多分に漏れず、会員のほんの一部の不心得者が組織全体に暗い影を投げかける。
二か月前、中西部のとある大学のオプス・デイのグループが、新入会員に薬物のメスカリンを与えて陶酔感を体験させようとし、検挙された。別の大学生は棘のついたシリスのベルトを所定の一日二時間より長く着用したため、感染症にかかって危うく命を落とすところだった。ボストンではつい先ごろ、絶望した若い投資銀行貞が、全財産をオプス・デイに譲渡すると署名したのちに自殺を図った。
心得ちがいの羊たちよ。アリンガローサは彼らに思いをはせた。
もちろん、何より困惑させられたのは、スパイであったFBI捜査官ロバート・ハンセンの裁判が大々的に報道されたときだ。ハンセンはオプス・デイの会員であるうえに、性的倒錯者でもあったことが判明した。裁判の過程で、ハンセンが自分の寝室に隠しビデオカメラを仕掛け、妻とのセックスを友人たちに見せていた証拠が明かされた。「敬虔なカトリック信者の娯楽とはとうてい言えない」と裁判長は述べた。
残念ながら、こうした事件が重なって、オプス・デイ監視ネットワークという団体が幅をきかせるようになった。この団体の広く知られたウェブサイト(www.Odan.Org)では、入会の危険を警告する元会員たちによる、恐怖の体験談が語り継がれている。いまやメディアはオプス・デイを〝神のマフィア〟や〝キリストのカルト〟などと呼ぶ。
人は理解できないものを恐れる。アリンガローサは思った。こういう批判的な手合いは、オプス・デイがどれだけ多くの人々に豊かな人生をもたらしてきたかを知っているのだろうか。われわれはヴァチカンの全面的な支持と恩恵を受けている。オプス・デイは教皇直轄の属人区だ。
だが、このところオプス・デイは、メディアよりはるかに強大な力に脅かされていた……予想もしなかった敵であり、アリンガローサ自身もけっして逃れることはできない。五か月前、司教の権力の万華鏡は揺さぶられ、いまだその打撃によろめいていた。
「連中はみずからはじめた戦争に気づいていない」飛行機の窓から眼下の暗い海を見やりながら、アリンガローサはつぶやいた。つかの間焦点が移り、窓に映る自分の不恰好な顔が目に留まった―浅黒く面長で、平たい曲がった鼻が際立っている。スペインで宣教師をしていた若き日に、こぶしで叩きつぶされたものだ。体の傷痕はもうほとんど残っていない。アリンガローサの傷は肉体でなく、魂の世界にある。
飛行機がポルトガルの海岸線を越えたころ、法衣のなかで消音モードの携帯電話が振動した。フライト中の携帯電話の使用は航空法で禁じられているとはいえ、これは是が非でも出なくてはならない電話だ。この番号を知るのはただひとり、かつて電話機を自分に送ってきた男だ。
興奮しつつも落ち着いて応答する。「もしもし?」
「シラスがキー・ストーンのありかを突き止めました」相手は言った。「パリです。サン・シュルピス教会にあります」
アリンガローサは笑みを浮かべた。「なら、すぐ近くだな」
「すぐに手に入れられます。ただし、あなたの力が必要です」
「わかっている。何をしたらいいか教えてくれないか」
電話を切ったときには、心臓が高鳴っていた。アリンガローサはふたたび夜の虚空を見つめた。みずからはじめたことの重大さゆえに、わが身が小さくなった気がした。
五百マイル離れた場所では、色素欠乏症のシラスが、水を張った小さな洗面器の上にかがみこんで背中の血をぬぐいながら、水に赤いらせん模様ができるのを見つめていた。ヒソップの枝でわれを浄めたまえ、さらばわれ清まらん、と「詩篇」のことばを唱えつつ祈った。われを洗いたまえ、さらばわれ雪よりも白からん。
シラスは、以前の生活を捨てて以来はじめての高揚感を覚えていた。それは意外でもあり、大いなる刺激でもあった。この十年間〝道〟に従って、罪を浄め、人生を立てなおし、暴力に満ちた過去を消すべくつとめてきた。けれども、今夜はなぜかすべてが逆もどりした。必死で葬り去ろうとしてきた憎しみが呼び覚まされた。これほどすぐに昔を取りもどせるとは驚きだ。となれば、おのずと昔の腕もよみがえった。錆びついてはいるが、じゆうぷん使えた。
イエスの伝えたものは、平和……非暴力……そして愛である。シラスが最初に教えられ、心に刻んだことばだ。そして、それは神の敵がまさに叩き壊そうとしているものでもある。神を力で脅かす者は、力で報いを受ける。未来永劫、変あらぬ掟だ。
二千年のあいだ、キリスト教の戦士たちはその信仰を破壊者たちから守ってきた。
そして今夜、シラスは戦いに駆り出されていた。
傷が乾くと、頭巾のついた長い法衣をまとった。質素な暗色の毛織りで、肌と髪の白きが際立つ。腰まわりに帯紐を締めて頭巾を持ちあげ、鏡に映るおのれの姿を赤い目でながめて愛でた。車輪は動きだした。
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