THE DA VINCI CODE (CHAPTER 01) Translating...
Mật mã Da Vinci (tiếng Anh: The Da Vinci Code) là một tiểu thuyết của nhà văn người Mỹ Dan Brown được xuất bản năm 2003 bởi nhà xuất bản Doubleday Fiction (ISBN 0385504209). Đây là một trong số các quyển sách bán chạy nhất thế giới với trên 40 triệu quyển được bán ra (tính đến tháng 3, 2006), và đã được dịch ra 44 ngôn ngữ.
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ロバート・ラングドンはゆっくりと目を覚ました。
暗闇で電話が鳴っている―鈴のような、耳慣れない音色だ。ベッド脇のラソプを手で探り、明かりをつけた。半眼のまま見まわすと、そこは壮麗に贅を尽くした寝室だった。ルイ十六世時代風の家具、フレスコ画の描かれた壁、そしてマホガニー製の巨大な四柱式ベッド。
ここはどこだ?
ベッドの支柱に掛けられたジャカード織りのバスローブに、文字を組み合わせたロゴが刺繍されている―〈ホテル・リッツ・パリ〉。
少しずつ霧が晴れてくる。
受話器をとった。「はい」
「ムシュー・ラングドン?」男の声だ。「おやすみのところ申しわけありません」
朦朧としたまま、かたわらの時計に目を向けた。深夜の十二時三十二分。一時間しか眠っていないのに、わが身が死人のように感じられる。
「こちらは顧客係です、ムシュー。恐れ入りますが、ご来客がありまして。急用とのことですが」
頭がまだぼんやりしている。客? こんどは、ベッド脇のテーブルに載ったしわくちゃのパンフレットを見つめた。
アメリカン大学パリ校が自信を持って開催する
ロバート・ラングドン(バーヴァード大学宗教象徴学教授)と過ごすタベ
ラングドンはうなった。今夜の講演が―シャルトル大聖堂の石造部分に隠された異教徒の象徴を分析するスライドショーだったが―聴衆のなかにいた保守分子の神経を逆なでしたのかもしれない。きっと宗教学者のたぐいがここを突き止めて、因縁をつけようというのだろう。
「すまないが」ラングドンは言った。「ひどく疲れているし、それに―」
「ですが、ムシュー」顧客係は引きさがらず、差し迫った口調で低くささやいた。
「いらっしゃっているのは、かなりの立場のかたのようでして」
それはそうだろう。宗教に関する絵画や象徴学を扱った著作のせいで、自分の名は美術界で心ならずも広く知られていたが、去年かかわったヴァチカンの事件が報道されて、知名度が百倍に跳ねあがった。それからというもの、尊大な歴史家や美術愛好家が引きも切らずに訪れる。
「もしよかったら」丁重さを失わないよう最善を尽くしながら、ラングドンは言った。
「相手の名前と電話番号を聞き出して、火曜にパリを発つまでにこちらから電話すると伝えてくれないか。よろしく頼む」顧客係が言い返す前に受話器を置いた。
身を起こし、そばに置かれた《客室サービスのご案内》を渋い顔で見た。表紙には誇らしげにこう書かれている―〝光の街で幼子のようにおやすみください。パリ・リッツで至福の眠りを"。顔をあげ、壁の姿見にぼんやりと目をやった。見つめ返すその姿はまるで別人だ―髪が乱れ、やつれきっている。
休暇が必要だよ、ロバート。
この一年の重圧が自分にのしかかっているらしいが、鏡のなかにその証拠を見るのは気分がよくなかった。いつもなら眼光鋭い青い目も、今夜はどんよりと曇っている。頑丈な上顎やくぼんだ下顎を、濃い無精ひげが覆っている。こめかみには灰色のものが目立ち、濃く硬い黒髪のなかへ進入しつつある。白髪は学者らしい風貌を際立たせるだけだと女性の同僚たちはなだめるけれど、それを真に受けるほどおめでたくはない。
《ポストン・マガジン》誌の連中にこの姿を見せてやりたいものだ。
先月、なんとも気恥ずかしいことに、《ポストン・マガジン》誌は自分を〝市で最も注目度が高い人物トップテン〟のひとりに選出した。怪しげな名誉のおかげでハーヴァードの同僚たちからの冷やかしが絶えなかったものだが、今宵、わが家から三千マイル離れた地の講演会場で、大いなる栄誉がふたたび頭をもたげて襲いかかった。
「ご来場のみなさん……」女性司会者が、パヴィヨン・ドーフィヌに設けられた講演会会場を埋めつくす聴衆に向かって告げた。「今夜のお客さまについては、ご紹介するまでもありません。数々の本の著者でいらっしゃいます。『知られざる宗派の象徴解釈』、『イルミナティの芸術』、『失われた表意文字言語』、そして文字どおり『宗教図像解釈学』。みなさんの多くが教科書として授業でお使いになっているものです」
聴衆のなかの学生たちが熱心にうなずいた。
「先生のご紹介にあたっては、すばらしい経歴をご説明しようと、わたくしは考えておりました。ですが……」司会者は壇上の席にいるラングドンに楽しげな視線を投げかけた。「ある出席者のかたが、先ほどわたくしに手渡してくださったものがあります。そちらのほうがずっと……注目度が高いとでも申しましょうか」
そう言って《ポストン・マガジソ》誌を掲げた。
ラングドンはすくみあがった。いったいどこで手に入れたんだ?
ばかげた記事からの抜粋を司会者が読みあげるにつれ、ラングドンは少しずつ椅子に身が沈んでいくのを感じた。三十秒がたち、聴衆がにやにや笑っているのに、司会者は終える様子がまったくない。「そして、昨年ヴァチカンのコンクラーベで果たした異例の貢献について、本人が公に語ろうとしないことで、注目度が上昇したのはまちがいない」そこで司会者は聴衆に問いかけた。「もっとお聞きになりたい?」
拍手喝采が沸き起こった。
だれかこの女を止めてくれ。ラングドンの願いもむなしく、司会者はふたたび記事に突入した。
「何人かの年下の受賞者のような典型的な美形とは同類に括れないだろうが、この四十代の大学教授には学者としての魅力以上のものが備わっている。魅惑的な風貌に加え、たぐいまれなほど落ち着いたバリトンの声がさらに人を引きつける。その声を女子学生たちは〝チョコレートみたいに甘く響くの〟と評している」
会場は爆笑の渦に包まれた。
ラングドンはぎこちない笑顔をつくろった。つぎに何が来るかはわかっている―〝ハリス・ツイードのハリソン・フォード〟とかなんとかいうくだらない一節だ。もうはとばりも冷めたろうと高を括って、今夜もハリス・ツイードとバーバリーのタートルネックといういでたちでいたので、すぐに行動を起こすことにした。
「ありがとう、モニーク」ラングドンは言い、早々と立ちあがって司会者を演壇から遠ざけた。「《ボストン・マガジン》誌は作り話が実にうまい」聴衆に顔を向けて困惑のため息をついた。「ともあれ、この記事を捏供した人を見つけたら、領事館に頼んで退去処分にしてもらいますよ」
聴衆は笑った。
「さて、みなさん。ご承知のように、わたくしが今夜ここに立っているのは、象徴の持つ力についてお話しするためで……」
ホテルの部屋で、電話の音がふたたび静寂を破った。
信じられない思いでうなり声を漏らしながら、ラングドンは受話器をとった。「はい?」
案の定、顧客係だった。「ムシュー・ラングドン、たびたび申しわけありません。先ほどお見えになったかたは、いまそちらのお部屋へ向かっていらっしゃいます。お知らせすべきだと思いまして」
ラングドンの眠気は吹っ飛んだ。「部屋へよこしたって?」
「お詫び申しあげます、ムシュー。しかし、こういうかたの場合……その筋に依頼するわけにもいきませんし……」
「はっきり言ってくれ。そいつは何者なんだ」
しかし、電話は切られた。
それとほぼ同時に、こぶしでドアを叩く重い音が聞こえた。
不可解に思いながら、ラングドンはベッドから抜け出した。サボヌリーのカーペットに爪先が深く沈むのを感じる。ホテルのバスローブをはおってドアへ歩み寄った。
「どなたですか」
「ミスター・ラングドン? 話があります」その男の英語には耽りがあった。鋭く権高な口調だ。「わたしはジェローム・コレ警部補。司法警察中央局の者です」
ラングドンはとまどった。司法警察? DCPJと言えば、アメリカのFBIにほぼ相当する。
チェーンを掛けたまま、ドアを数インチあけた。こちらを見ている顔は細長く血色が悪い。男は並はずれた痩身で、いかめしい青の制服を身につけていた。
「入れてもらえますか」捜査官は尋ねた。
ラングドンは不安を覚えて蹟躇した。男の濁った目がじっと観察している。「どういうご用件でしょう」
「警部が内密の件で、あなたの専門知識をお借りしたいと申しています」
「いまからですか」ラングドンは感情を抑えて言った。「夜半を過ぎていますよ」
「あなたが今夜、ルーヴル美術館の館長と面会する予定だったというのはほんとうですか」
困惑の度合いが急に高まった。今夜の講演が終わってから、名高いジャック・ソニエール館長と飲みにいく約束だったのに、ソニエールは姿を見せなかった。「ええ。どうしてご存じなんです」
「館長のスケジュール帳にあなたの名前がありました」
「何か不都合でも?」
捜査官は陰鬱なため息をつき、わずかにあいたドアの隙間からインスタント写真を手渡した。
その写真を見て、ラングドンは全身をこわばらせた。
「これは小一時間前に撮られました。ルーヴルの館内です」
その異様な写真を目にした瞬間、ラングドンは嫌悪と驚きを覚えたが、それがすぐさま怒りに変わった。「だれがこんなことを!」
「あなたが象徴学におくわしいことと、館長に会う予定だったことを考え合わせて、われわれはこの件の解決のために力を貸していただけないかと思いついたわけです」
ラングドンは写真を見つめた。戦慄に怯えが加わった。実に奇怪で身震いするほどの光景。見るうちに既視感に襲われて心を掻き乱される。一年余り前になるが、ある遺体の写真を受けとって、同様に助けを求められたことがある。それから一日もしないうちに、ヴァチカン市国で危うく命を落としかけた。これはそのときの写真とはまったくちがうものの、筋書きの一部は気味が悪いほど似ている。
捜査官は腕時計を見た。「警部がお待ちしています」
ラングドンはほとんど聞いていなかった。目は写真に釘づけのままだ。「この記号。それに、奇妙なのは体の……」
「この恰好ですね」捜査官はことばを添えた。
ラングドンはうなずき、背筋に寒気を感じながら目をあげた。「他人の体にこんなことをするなんて、信じられない」
捜査官はきびしい顔つきになった。「そうではありません、ミスター・ラングドン。ここに写っている姿は……」いったんことばを切る。「ムシュー・ソニエールがご自分で作りあげたものです」
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